かねてより行ってみたかった場所の1つに、全自動麻雀卓メーカー・大洋技研さんの本社がありました。
本社と工場が隣接していて、出荷前の全自動卓(AMOSシリーズ)の点検・整備などが行われているそうなんです。
ただ場所が和歌山(自分は普段東京にいる)で、かつ社会情勢的に微妙だったこともあり、なかなか行けてませんでした。
それが麻雀用品ブロガー歴5年目にしてついに訪問させていただけることになり、行ってきました!
自分だけで楽しむのは申し訳ないので、以下にレポートをまとめます。
目次
大洋技研社とは?AMOSシリーズで知られる国内最大手麻雀メーカー
知らない人もいるかもなので大洋技研社について簡単に紹介します。
知ってるよ!と言う方は次の章まで読み飛ばしていただいても大丈夫です!
・創業69年目の化学メーカー
・麻雀だけでない3本柱
・麻雀への参入はやや後発
創業69年目の化学メーカー
大洋技研社は麻雀卓AMOSシリーズを手掛ける化学メーカーです。
ちなみに大洋技研社の設立は2014年ですが、これは組織再編による分社化のためで、大洋化学グループとしては2023年で69期目となるそうです。
本社は和歌山にあり、麻雀部門は大阪と東京にも支店があります。
麻雀だけでない3本柱
大洋技研社はかなりバランスの良い企業です。
主な事業は麻雀、プラスチック加工、コンパウンドの3本で、それぞれ3〜4割ずつの内訳だそうです。
麻雀系の企業は基本麻雀一本のところも多い中、多角経営をしている点が特徴となります。
リサイクルペットの食器がAmazonなどで売り出し中↓
麻雀への参入、実は後発
そんな大洋技研社ですが、実は麻雀事業は後発です。
手積み牌が1963年ごろ、全自動麻雀卓への参入はさらに遅めの1988年です。(1970年代から全自動卓はあった)
後発ではあるものの、同社の別事業とのシナジーを活かし、現在では卓シェア国内トップとなっています。
大洋技研社本社に着くまで!和歌山県御坊へのアクセス
ではそんな大洋技研さんの本社(和歌山県御坊)に行ってきたので、まずはアクセスから紹介していきます。
せっかくなので旅行気風で関東からの道のりを紹介します。
まずは大阪へ
大洋技研社の本社は和歌山県の御坊にあります。
ほとんどの人は新大阪経由になると思うのでまずは大阪へ。
自分は東京からなので新幹線で行きました。
(こいつ毎月大阪行ってんな?)
先月:マツオカさんショールームツアー(Youtube)
特急くろしおで御坊へ
新大阪からは1時間に1本くらいのペースで特急くろしおが出ています。
これに乗ると1時間半くらいで御坊に着くのでこれに乗りましょう!
余談ですがくろしおの特急券を買うところでちょっと手こずりました。
みどりの券売機(新幹線とかと同じ方)で買えるのですが、くろしおが全席指定席なので、指定席検索の方にしないと出ないんです。
特急券が必要なタイプの特急↓
くろしおは最初のうちは大阪の街並み、やがて山間部に入り、ちょっとだけ「くろしお!」みたいなオーシャンビューもあります。
御坊駅から車で5分程度、大洋技研社着
御坊駅からは車で5分、徒歩だと20分ほどの位置に大洋技研さんの本社があります。
今回は車で迎えにきてもらいました!
ちなみに大洋化学グループの本社はめっちゃ広いです。
敷地 19,198平方メートル(本社・工場)
建物 9,200平方メートル
御坊駅周辺情報
ちなみに御坊駅周辺はカフェやホテルなどもあるので、時間がちょっと早すぎても安心!
自分は1時間くらい早く着いたので近くのカフェにいました。
本社の事務所にて、全自動麻雀卓AMOSシリーズの歴史を見せてもらってきた
ここからが本題です。
大洋技研さんの本社は事務所と工場に分かれており、まずは事務所でお話を聞かせてもらいました。
歴代AMOSシリーズの年表などもあったので、それを元に歴史を振り返っていきましょう。
動画版↓
始まりのAMOSGABIN
まずは同社初となる全自動麻雀卓AMOSGABINです。
1988年の発売で、時代背景でいうと、第二次麻雀ブームが収束した後くらい。『むこうぶち』の時代ですね。
当時10社くらいあった麻雀メーカーも徐々に減り始めているタイミングでの新規参入(後発)となります。
参入のきっかけとしては、もともと麻雀牌を作っていて麻雀業界との親和性があったこと、また、全自動麻雀卓関係の技術者とのご縁もあったことも影響しているそうです。
(全自動麻雀卓を作り上げたと言われる伝説のエンジニアが大洋さん本社に2年間住み込みでGABINを作ったそう)
後発なので今までにない価値として、「軽い全自動麻雀卓」を目指した点も特徴です。
これまでの卓は主に鉄でできており、重さは60kgくらいあるため、持ち運びは非常に大変でした。
そこを同社が得意とする樹脂素材に置き換えることで今までにない軽さを実現・・!
ただ最初のGABINについては、まあぼちぼちくらいの売り上げだったそうです。
全てを一新したアルティマ
大洋技研さん(当時は大洋化学)が一気にシェアを伸ばしたきっかけとなるのが、2005年に発売されたアモスアルティマです。
今でも配牌あり卓の代名詞として用いられることもあるアルティマですが、実は自動配牌以外にも、これまでの卓と大きく異なる点が多々あります。
- 1点吸い込み→4点吸い込みに
- ドラ出し機能が追加
- 接点式→電波式に
これまでは吸い込みは1点で行う形式だったものを4箇所に変更。これにより積み込みスピードをあげるとともに、攪拌率、保守性を向上させました。
さらにドラ表示が追加されドラをめくる手間を失くすなど、ゲームを早く回したい雀荘にとってありがたい機能が多数追加。
点棒の接点式は、点棒ごとで入れる場所を合わせないとならない、汚れがつくと読み取りエラーになるなどの問題がありましたが、電波式にすることで解決されました。
これらの機能により爆発的な人気となりました。(ただすでに販売は終了し、部品の製造も終了)
初の家庭用卓・アモスマーテル
アモスアルティマを作る際、それまでの全自動麻雀卓とは部品レベルで一から作り上げた(一新された)そうです。
その結果不要となってしまった「これまでの部品」を流用して作られたのが同社初の家庭用卓アモスマーテル。
発売は2008年で、値段はなんと19万円・・!
2000年代の時点ですでに20万円を切っていたと言うのは驚きでした。
旧タイプの卓なので吸い込みは1箇所、点数表示などはなし。
アモスレックス、シャルム、ヴィエラの順
アルティマが人気すぎたため、業務用卓の次世代機は10年ほど間が空き、2014年のアモスレックスとなります。
新機能としては成績管理システムなどが追加されています。
(実はアルティマとレックスはそんなに変わらず、レックス2で大きく機能追加されている。見た目はレックス1、2でほぼ同じなんだけど)
あとは、点数表示のないシャルム、点数表示がセンターだけのヴィエラも実はレックスのちょっと後の時代にできたんだそうです。へー。
(思想として、中身が業務用の卓を安く作ろうとして作られたそう)
実はめっちゃ進化してるアモスレックス2
アモスレックスとほぼ同じ外観のアモスレックス2ですが、実はかなり機能が追加されています。
具体的には以下の通り。
- 王牌7山残し機能
- リンシャン下ろし機能
- 3山上がり機能
- USB機能
山の残し方については、これまではドラが捲られはするもののどこが捲られるかはランダムで、山を分ける必要がありましたが、レックス2では王牌が必ず7山で分離されるようになったんです。
ちなみにこの機能は、もと電元オートメーション社の特許を買い取り追加したものだそうで、現在でもAMOSシリーズのみの機能となっています。
家庭用卓AMOSJPシリーズ登場!
2023年現在でも大洋技研社の家庭用卓として売り出されている主力のAMOSJPシリーズが登場です。
最初はAMOSJPが発売し、その後AMOSJP2となり、さらに点数表示がついたAMOSJP-EXが発売しました。
2022年にはカラーで点差も出るAMOSJP-EX COLORも出ましたね。
アモスマーテルとの違いとしては、
4点吸い込みとなった点
が大きく異なり、それに伴いベルトなども変化しています。
MリーグでおなじみのAMOSREXX3
業務用の最新はAMOSREXX3です。
Mリーグでも用いられており、みなさんご存知かと思います。
- 配牌の上下整列機能
- オープントップの一新されたデザイン
- 瞬間点棒収納機能ポケット
などが新機能ですね。
実はこのAMOSREXX3なのですが、白色を作るのに苦労したそうです。
と言うのも、これまで実はAMOSシリーズに白色はなく、REXX3で初めて作られたんだそうです。
(Mリーグ2018-2019シーズンにあった白色のレックス2は塗装した特注品だったんですって。初耳!)
樹脂は単に混ぜれば新しい色を作れるわけではありません。
理想の色を作るのに原料を一から探したり、(白色は汚れなどが目立ちやすいので)黒点が出ないように調整したり、などなど。
そんな苦労を経て世に送り出された白色レックス3は、Mリーグ効果もあり売れ行きは好調だそうです!
アモスレックス4は出るの?いずれ
以上がAMOSシリーズの歴史でした。
AMOSREXX3でほぼ完成していると言っても過言ではないですが、さらに新作も開発中だそうです。
時期や機能はまだ未定とのことでしたが、やがてレックス4(あるいは別の名称で)出るかもしれません・・!
アモスシリーズの年表まとめ
年表を撮らせてもらってきました。
こうしてみるとかなり種類が多いことがわかりますね。
(AMOS CUBE、SAVIOR、アモスミニミニなどはここにはないので実際にはさらに多そう)
番外編:ハローキティ牌もあった
ハローキティ牌もありました。
こちらについては限定2,000個のみの販売ですでに生産終了となってしまったため、現在ではプレミアが付いている商品です。
他にも応接室には歴史ある竹牌なども・・!
***
ちなみにここまででこの記事は半分くらいです。ここからは全自動麻雀卓の製造現場(工場)へ潜入していきたいと思います。
(許可をとって入らせていただきました)
大洋技研社の全自動麻雀卓の製造現場へ潜入させてもらってきた!
本社から車で5分ほど行ったところに工場があります。
大洋技研さんの全自動麻雀卓は中国の工場で製造されますが、組み立てや整備、最終チェックなどは国内で行われています。
組み立てだけ?と思うかもですが、日本でいちばん卓が出荷されている場所ならではの工夫がたくさんありました。
エンジニアリング部 製造技術サポート課係長・藤浦さん↓
以下では面白いと思った点を紹介していきます!
この扉の奥が製造現場↓
動画版も作りました↓
基本は卓のチェックと組み立て
美浜工場では主に卓のチェックと組み立てが行われておりました。
卓ごとでエリアが分かれていて、それぞれで基盤、枠、牌などをチェックしている様子が見られました。
牌については、これ知らなかったのですが、出荷前に色が均一になるように、1つ1つ手作業で色を合わせているんだそうです。
卓と牌は1台1台手作業で確認されており、数台の卓が出荷されていきます。
連続試験装置がすごい!
連続試験用の装置がすごかったです。
卓が何台も並んで全自動で牌が落とされている様子は見ていて面白かったです。
しかもこれらの試験結果は記録され、エラーがあるとランプがつく仕組みになっているとのこと・・!
こういったシステムを自社で作り上げてしまうのは化学メーカーならではだなと思いました。(すごい)
水車のように卓を回転させる装置
また、組み立てを効率化するための装置がありました。
この装置に卓の枠を取り付けると、作業面が常に下に来るように調節することができます。
アモスジョイ、意外に人気だった
工場の一角にアモスジョイエリアがありました。
アモスジョイは元々期間限定の予定だったそうですが、意外と売れ行きが良いので販売続行となったそうです。
あとアモスジョイ雑学として、ジョイ枠は点棒入れの位置が微妙に左にズレていると言うのを教えてもらいました!
(理由は内部中央に山積みのためのモーターがあるため。また、内部構造が異なるため、配牌あり卓(レックス)にジョイ枠をつけることはできないそうです)
倉庫には100台以上の全自動卓が・・!
あとは倉庫を見せてもらったのですが、卓が無限にあって壮観でした。
麻雀部門は拡大しているそうで、今では3つも倉庫があるとのこと!
脚が森のようだった・・!
これは全自動麻雀卓用の十字脚ですね。
連なっていると森のようですね!
大会用の卓も多数待機中
ちなみに大洋技研さんの倉庫には、大会などで使用(貸し出す)用の卓もあります。
具体的には
バッテリー式のアモスジョイ(77台)
が用意されています。
現在ではアモス上に関して年2回くらいしか出番がないそうなので、大型大会をしたい人などはお声がけすれば貸してもらえるかもしれません・・!
ここから卓は送られるゲート
卓が輸送されるゲートがありテンション上がりました。
トラックが来るとゲートが開いて卓がドナドナされていくんだそうです。
ちなみに積み下ろしにはこんな感じの全自動卓みたいな装置を使うらしい↓
ターンテーブルは国内で製造されている
全自動麻雀卓をパカっと開けたところにある、牌を回転する部分をターンテーブルと言います。
このターンテーブルについては、製造が非常に難しく、ここのみ国内で製造されているそうです。
倉庫で原料袋を見せてもらいました。
番外編:アルティマ、レックスの制作者に会ってきた!
「アルティマを作った技術者に会ってみないか?」と言われ、メインの工場とは別の建物へ・・!
そこでお会いしたのが西端さんです。
アルティマ、レックスのデザインや機能を手掛けており、知る人ぞ知る全自動麻雀卓エンジニアです・・!
自身もかなりの麻雀好きとのことで、雀士目線のデザインが(思ったよりも)色々詰め込まれていることを知りました。
例えば最新のレックス3について、チップと点棒が分かれて落ちるようにする機能などは西端さんが実現方法を検討したそうです。
他にも工夫として、起家マーク置き場が対面から見やすいようにちょっと傾いていたり、配牌の上がってくる部分の手前の枠は、配牌を起こしやすいように丸くなっていたりなどがあります。
また、ねんりんピックで見かけた未発売卓・アモスリフトについても開発室内に置かれており、こちらも現在開発(ブラッシュアップ)中だそうです。
大洋技研社おすすめ商品コーナー!麻雀以外もあり
ここからは大洋技研社のおすすめ商品を紹介します。
麻雀関係以外でも面白い商品があるのでぜひチェックしてみてください。
AMOSJPシリーズ
まずは家庭用の全自動麻雀卓・AMOSJPシリーズです。
2023年現在では、
- AMOSJP2
- AMOSJP-EX
- AMOSJP-EX COLOR(2022/12発売)
の3種類が売り出されています。(それぞれ折りたたみ脚と座卓兼用脚がある)
また業務用のAMOSREXX3も個人で購入することが可能です。(高いけど)
リサイクルPET原料の食器製品「LauLau」
続いてはペットボトルをリサイクルして作られた食器です。
ペットボトルをリサイクルして作るという発想がSDGsで良いですね。
PET原料は意外に熱に強く、電子レンジでも大丈夫だそうです。(110℃まで)
また、落としても割れにくいので小さなお子さんがいるご家庭などにも最適。
見た目は陶器っぽい感じで、触った感じはすべすべでした。ペットボトル感はなかったです。
リサイクルペットの食器がAmazonなどで売り出し中↓
水耕栽培キット
また、ラックやマグカップなどで植物を大量栽培できる「水耕栽培キット」も売り出されています。
土がいらないので、水と光があればOK。
レタスやハーブ、ミニトマトなどもいけるそうです。
終わりに
以上が大洋技研さんの本社訪問記でした。
麻雀メーカーであると同時に化学メーカーでもあるので、化学メーカーっぽい工夫なども随所にあり、非常に面白かったです。
全国の雀荘に導入される全自動麻雀卓は、ほぼ大洋技研さんの本社工場を経由していると考えると、より身近になるかなと思います。
麻雀以外の事業のそれぞれニッチで面白いものばかりだったので、ご興味のある方はぜひ購入してみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、お忙しい中ご対応いただいた大洋技研社のみなさま、ありがとうございました!
ではまた。良い麻雀ライフを!
◆大洋技研さんをさらに知りたい人へ
・・いろんな事業があります!
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